ブリッジルーツの
日本・中国・韓国見聞録

 

弁護士 李武哲 (執筆協力:弁護士  金佑樹)

 

【第54回】韓国のカジノ政策

1.はじめに 

 韓国は多くの日本人に身近な旅行先として親しまれています。日韓関係の冷え込みに伴い、2013年の韓国への日本人渡航者数は前年比で20%以上も減少しましたが、いまだ270万人以上もの方々が韓国を訪れています。韓国に旅行される方々の目的は、グルメや美容から韓流タレントの追っかけまで多種多様ですが、カジノでのギャンブルを楽しみにされる方も少なくないのではないでしょうか。

 日本でも今国会での「カジノ法案」の成立が見込まれ、カジノへの注目が集まっています。そこで今回は、韓国のカジノ政策についてご紹介したいと思います。

2.韓国カジノの沿革

 韓国では、外貨獲得と観光客誘致を目的に、1967年に既存の「観光振興法」を改正する形でカジノ営業が合法化されました。翌1968年、韓国カジノの第一号がソウル近郊の仁川で開業し、それに次いでソウル市内でも同年、日本の方になじみ深いパラダイスカジノ・ウォーカーヒルが営業を開始しました。

 韓国カジノは当初、利用者を外国人観光客に限定せず、韓国国民にも門戸を開いていましたが、ギャンブル依存症や汚職などの社会的弊害が大きくなったことから、わずか2年後の1969年に韓国国民を入場禁止とする制度変更がなされました。

 その後1990年代にかけて韓国ではカジノ建設ラッシュとなり、現在全国16か所で外国人専用カジノが営業しています。近年では、これらカジノに年間200万人以上の外国人観光客が来場し、その売上高も1兆ウォン以上に上っています。

 1967年当時、年間10万人程度であった外国人観光客は、2012年に1000万人を突破しました。その主な要因は韓国の経済発展や韓国政府による積極的な外国人観光客誘致政策などによるものですが、カジノの存在もその一助になっていることは明らかです。

3.韓国国民へのカジノ解放とその弊害

 韓国では1969年以降、全てのカジノが外国人専用とされていましたが、韓国北東部にある江原道の廃鉱地域の経済活性化を目的とした特別法が制定され、同法に基づき例外的に韓国国民の入場可能なカジノが許可されたことから、「江原ランドカジノ」が国内唯一の韓国人向け施設として2000年10月に営業を開始することとなりました。

 江原ランドカジノはソウル市内から片道3時間以上かかる不便な地域にあるにもかかわらず、韓国国民のギャンブル熱はすさまじく、営業初日から満員御礼が続いたそうです。現在では、江原ランドカジノ1か所のみで外国人専用カジノ16か所の合計を上回る総売上げ、入場者数を毎年記録しています。

 江原ランドカジノは当初の目論見通り、優秀な営業成績を上げることで地域の活性化に貢献することとなりましたが、その一方でギャンブル依存症の蔓延という弊害を生じています。

 ギャンブルに熱中するあまり全財産を使い果たしてしまい帰宅困難となった「カジノホームレス」の出現や、闇金融業者からの借入トラブル、借金苦による自殺者の発生など、ギャンブル依存症は深刻な社会問題となっています。

 運営側でも、ギャンブル中毒ケアセンターを設立して、依存症の治癒支援、職場復帰支援を進めたり、入場回数が一定数を超えた者に対するカウンセリングの義務化や入場制限を行うなど、様々な対策をとっていますが、現在でも3000人近いギャンブル依存症患者が存在しています。

4.おわりに

 日本でもカジノ法案の成立に向け、カジノのメリット・デメリットについての議論が盛んに行われています。特に、日本国民へのカジノ開放の是非については、激しく意見が対立するところとなっています。

 韓国での自国民へのカジノ開放がもたらした功罪は、われわれが自国の制度を検討するに当たって大いに参考となるのではないでしょうか。

 今後の韓国のカジノ政策の行方に注目したいと思います。

以 上

 


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