ブリッジルーツの
日本・中国・韓国見聞録

 

弁護士 李武哲 (執筆協力:弁護士  宮川峻)

 

【第58回】「韓国におけるたばこ規制」

1.はじめに 

 ビールを片手にタバコを吸いながら談笑する―日本の居酒屋でよく見かける風景です。

 ところが、韓国では、今後このような風景を見ることができなくなります。なぜなら、国民健康増進法及び同施行規則を改正によって、2015年1月1日以降飲食店での喫煙が全面的に禁止となるためです。

 韓国の喫煙率は、世界的に見てトップクラスとなっています。2012年のWHOによる喫煙率統計によれば、韓国の喫煙率は27.0%(男性47.3%、女性6.8%)となっており、喫煙の弊害による死亡者は年間で5万8000人にも達しているといわれています(ちなみに、2014年のJTの調査によれば、日本の喫煙率は、19.7%となっています)。韓国では、このような事態を打開するために、様々なたばこ規制に乗り出しています。

 そこで、今回は、韓国のたばこの規制について、ご紹介したいと思います。

2.法律によるたばこ規制

 韓国におけるたばこ規制は、1995年9月1日に施行された国民健康増進法によって本格的に開始されました。同法の主なたばこ規制としては、①喫煙場所の規制、②パッケージへの警告文表示義務、③広告の規制、④たばこ用自動販売機の設置場所規制が挙げられます。

 このうち、飲食店における喫煙規制は、段階的に行われてきました。2013年12月までは、150平方メートル以上の規模の飲食店が全面禁煙となり、2014年12月までは100平方メートル以上の規模の飲食店が全面禁煙となっています。そして、冒頭でご紹介したように、ついに2015年1月1日から、全ての飲食店で全面禁煙となります。これに違反すると、飲食業者は500万ウォン以下の過料を科されます。また、喫煙した者も10万ウォン以下の過料となります。2015年以降、韓国に旅行される方はお気を付け下さい。

3.韓国政府のたばこ規制に関する政策

 韓国政府は、2014年9月11日、①たばこ価格の値上げ、②包括的たばこ広告の禁止等のたばこ規制に関する立法の推進、③喫煙者の禁煙治療集中支援などを主な内容とする禁煙総合対策を打ち出し、これまで以上に厳しいたばこ規制を推進していくことを発表しました。

 このように、政府が舵を取って一気に政策を推進し、目標達成を目指すという方式は、伝統的に韓国政府が得意とするところであり、今回も数年のうちに韓国の喫煙率が大幅に減少することが予想されます。

4.たばこに関する訴訟

 韓国における最初のたばこ訴訟は、喫煙者個人(原告)が、喫煙によって癌に罹患したとして、国及びたばこ製造会社(被告)を相手取って損害賠償を請求したという事案です。この訴訟は、15年にもわたり争われてきましたが、ついに2014年4月10日、韓国最高裁が、①たばこの有害物質を取り除かなかったことが、製造物設計上の欠陥とはいえない、②原告の喫煙と原告の癌の発症と間に因果関係は認められないとして、喫煙者の請求を棄却する判断を下しました。

 これにより、今後、喫煙者個人が、国やたばこ会社に対して損害賠償請求をすることは困難になったといわざるを得ません。

 そこで、韓国国内において現在非常に注目されている訴訟があります。その訴訟は、2014年4月14日、国民健康保険公団(韓国における健康保険を運営している機関)が、KT&G(韓国唯一のたばこ製造会社)などのたばこ製造会社を相手取り、喫煙による健康被害に関し、医療機関に対して支払った健康保険料の損害賠償を求めている訴訟です。

 現在はまだ第1審の審理中ですが、国民健康保険公団という公的機関による訴訟ですので、この訴訟の帰趨が、その後の韓国におけるたばこ規制の趨勢を左右するものと考えられます。

4.おわりに

 以上のように、韓国のたばこ規制は着々と進んでいます。隣国である韓国のたばこ規制状況は、当然日本のたばこ規制にも影響を及ぼすものと考えられますので、今後も韓国のたばこ規制についてより一層注目したいと思います。

以 上

 


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