ブリッジルーツの
日本・中国・韓国見聞録

 

弁護士 李 武哲

(執筆協力:弁護士 金 佑樹・弁護士 宮川 峻)

 

【第62回】「Uberの進出を阻む韓国の旅客運送業規制」

※この記事は亜州IR㈱「中国産業データ&リポート 亜州ビジネス」平成27年2月2日第1051号に掲載されたものです。

1.はじめに 

 近年、世界各国の旅客運送業界に旋風を巻き起こしている「Uber」。

 Uberは、スマートフォンのアプリを使ってすぐにタクシーやハイヤーを呼べるというサービスを手掛けて世界中で人気を博しています。日本でも、都内の一部限定ではありますが、2014年8月5日にサービスが開始されました。

 そうしたところ、昨年末に、韓国で大変注目を集める出来事がありました。Uberの創業者兼最高経営責任者(CEO)であるトラビス・カラニック氏(Travis Kalanick)氏が、韓国の旅客自動車運送事業法に違反している疑いがあるとして起訴されたのです。

2.今回の起訴が注目される理由

 これまでにもUberは、世界各地で規制されたり、訴訟を提起されたりしていますが、いずれもUberの営業停止を求めるといった民事事件が主です(実際に、ドイツでは、UberPopという同社のサービスがドイツ全土で禁止されるという厳しい規制を受けています。)。

 これに対して、今回の韓国の規制は、Uberの代表者が起訴されたという刑事事件です。仮に、カラニック氏が有罪となった場合、禁固刑が言い渡される可能性もあります。また、刑事事件の場合、捜査機関による関係先の捜索、関係書類(PC、ハードディスク等も含む)の差押えといった強制捜査が行われるため、営業の継続に重大な支障が生じることは不可避です。

 韓国の裁判所の判断次第では、今後各国でカラニック氏が起訴されるといった状況になる可能性もあり、大変注目が集まっています。

3.韓国でUberが問題視された点

 Uberが世界各国で規制されたり、訴訟を提起されるのはなぜでしょうか。

 Uberは、各国、各都市で異なるサービスを提供しており、一括りに話すことはできません。

 しかし、主に二つの点が問題視されることが多いようです。

 一つは、Uberが、旅客運送業を行うのに許可が必要な国・都市で旅客運送許可を得ないままサービスを提供している場合です。

 もう一つは、旅客運送を行う運転手に普通免許と異なる特別の免許が必要な国・都市(例えば、日本でいう第二種運転免許です。)で、このような免許を有していない運転手を乗客に配車するサービスを提供している場合です。Uberは、国や地域によっては、旅客運送の免許を有していない運転手であっても、同社の審査基準を満たす場合には、Uberに登録することを認め、これらの運転手を乗客に配車していました。フランスなどでは、この点が問題視され、タクシー運転手による大規模なデモにまで至ったようです。

 この点、韓国では今回、韓国内で旅客運送業を営むためには国の許可が必要であるにも関わらず、Uberが旅客運送許可を取得しないままサービスを提供している点が同国の旅客自動車運送事業法に違反しているとされています。

 これまでUberは、同社が旅客運送許可を得ていないことを理由に規制されたり、民事訴訟を提起された場合、同社はあくまで運転手と乗客のマッチングサービスをしているに過ぎないので、同社が旅客運送業の営業許可を得ていなくても違法ではないという見解のもとに争ってきているようです。そのため、カラニック氏の裁判においても、Uber側は、この見解に基づいて無罪を主張することが予想されます。

 したがって、カラニック氏の裁判では、韓国におけるUberのサービスが同国の定める旅客運送業に該当しているといえるかが焦点となると考えられます。

4.おわりに

 韓国では、近年、タクシーの需要減による供給過剰、売上の減少に伴うドライバーの労働条件の悪化が深刻な問題となっており、政府は需給バランスの調整を目的とした総量規制や減車補償制度の導入等の施策を積極的に推進してきました。本件は、Uberによる規制の隙間を狙った「確信犯的な」参入に対する韓国政府の強い反発が、起訴という厳しい形であらわれたものといえます。

 一方、韓国とは一転、日本では、今のところ特にUberが問題視されるような事態にはなっていません。しかしながら、Uberは、日本において一般乗用旅客自動車運送業許可(道路運送法4条1項)の許可を得てサービスを提供しているわけではなく、旅行業登録をした旅行代理店(旅行業法3条)としてサービスを提供しているようです。また、日本においても小泉政権時代の規制緩和後、タクシーの供給過剰が問題となっており、韓国と同様の火種は存在しています。

 そうであれば、日本においても韓国と同様の問題が生じる可能性は十分にあります。

 そのようなことになった場合、今回の韓国におけるカラニック氏の裁判結果がもたらす影響は決して小さくないと考えられます。

  そのため、今後も韓国におけるカラニック氏の裁判の動向に注視していきたいと思います。

以 上

 


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