ブリッジルーツの
日本・中国・韓国見聞録

代表弁護士  橋本吉文

執筆協力:中国人弁護士 厳 逸文

ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録代表弁護士 橋本吉文

【第65回】中国において吹き荒れる「独占行為取締り」の嵐


 前回、中国における商業賄賂の実態及び法規制を説明したが、今回は、中国独占禁止法(以下「独禁法」という)の施行に伴い、注目された私的独占行為について解説する。

1.私的独占行為に対する取締りの実態 

 2008年、独禁法が施行されて以降、独占行為に対する取締りを強化するという中央政府の姿勢が益々明らかになってきた。中国国務院の情報によれば、過去6年間に、335社が独禁法違反で処罰され、そのうち、外資企業は33社(10%)を占める。特に、2014年に、独禁法に関連する法令、ガイドラインが施行され、Microsoft、BMW、ベンツ等一連の大手企業に対し調査が行われ、膨大な制裁金が課された。中国のマスコミにおいても、「2014年は反独占行為の年」という表現がしばしば見られる。

2.独占行為に対する取締りの特徴 

(1) 突然の調査

 独禁法第38条では、「独禁法執行機関は、法に基づき独占的行為と疑われる行為について調査を行う」と規定されている。2014年に発生した独占行為取締り案件をみてみると、工商局は、第三者からの通報や自主的な調査により企業の独占行為に関する手がかりを取得し、それに基づき秘密調査をした上、突然企業に立ち入り調査を行う方法を採用している。2014年に処罰された企業の多数は、工商局の突然の立ち入り調査を受けた。この調査の突然性は、企業に大きな不安を与え、透明性や公平性を欠くなどの批判も受けたが、今後もこの調査方法が使用される可能性は依然として高いことが予想される。

(2) 高額の制裁金

 2014年の独占行為取締り案件のもう一つの特徴は、制裁金の金額が非常に高いという点である。独禁法の規定により、独占的協定を締結した場合又は市場の支配的地位を濫用した場合、独禁法執行機関は、企業に対し違法な所得を没収するとともに、企業前年度の売上高の1%~10%の制裁金を課すことができる。独禁法に違反し企業結合を実施した場合又は独占的協定を締結したが実施されていない場合は、50万元以下の制裁金を課すことができる(独禁法第46条~48条)。独占禁止法執行機関は、違法行為の性質、程度、実行期間等の要素を考慮して、制裁金の具体的な金額を決定する。同年8月に、中国当局は、三菱電機や住友、精工など12社の日本大手メーカーが価格カルテル協定を締結し、独禁法に違反したと認定し、そのうち10社に合計12億万元超(約200億円)の制裁金を支払うよう命じた。この制裁金額は、独禁法が施行されて以降、一番高額である。その他、2015年2月に、アメリカの大手クアルコム(Qualcomm)は、「市場支配地位の濫用」と認定され、前年度(2013年)における売上高の8%に相当する金額9.75億米ドルの制裁金が課された。これは、今まで1社に対して課された一番高額な制裁金である。

(3) 処罰の免除

 上記(2)で述べた日本12社に対する処罰の案件において、日立及び不二越は、自ら中国当局に独占行為があったことを報告し、重要な証拠を提供し、当局の調査に協力したので、制裁金の支払いを免れた。この処罰免除の根拠は、独禁法第46条である。独禁法第46条は、「事業者が独占禁止法執行機関に対して、独占的協定の締結に関する事情を自主的に報告し、かつ、重要な証拠を提供した場合においては、独禁法執行機関は、情状を酌量して当該事業者に対する処罰を軽減し、又は免除することができる」と規定している。なお、報告の順番は、処罰の軽減又は免除の判断に関して重要な考慮要素である。1番目の報告者に対し処罰を免除すること、2番目の報告者に対し50%以上の制裁金を免除すること、その他の報告者に対し50%以下の制裁金を免除することができる。したがって、自社の独禁法違反に当たる行為を発見した場合、なるべく早い段階で中国当局に報告することも対応策の一つとして考えられる。

 今後、中国市場へ進出する際に、独禁法違反のリスクが高まっていくと見込まれるため、中国へ事業を拡大するとともに、「独占的協定」、「市場支配地位の濫用」及び「企業結合」の三つの独禁法の主な規制対象を念頭に置いて、独禁法違反の防止措置を準備する必要があるだろう。

以 上


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