ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

 【第67回】転ばぬ先の労働法


                   弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ 

             弁護士 秋 山 理 恵

 

―第8回:違法にY1を解散しXらを解雇する一方,Y1と実質上同一会社であるY2を存続させてY1の事業を継続したのは,法人格の濫用であるとした事例(名古屋地裁平成26年4月11日判決)―

 

1 事案  ※本テーマに関係するところのみ抜粋しています

  1. H20.02.18 X1・Y1 雇用契約
  2. H20.01.25 X2・Y1 雇用契約
  3. H23.03.08 Y2設立(Y1社の業務のうち,労働者派遣事業の取引先及び派遣労働者の一部並びにIT事業がY2へ移行),X1X2はY2の取締役に就任
  4. H23.07.19 X1X2 労働組合加入
  5. H23.09.15 X1X2→Y1 未払賃金等請求訴訟提起
  6. H24.02.20 Y1(Y3)→X1X2 解雇通告,Y1解散
  7. H24.02.22 Y3→X1X2 解雇に至る要因と題する書面「Y1社員であるのに本件組合に加入し,会社に対し不当にも問題を起こし,Y1に対し1000万円を超す要求をし,かつ裁判にまで進行させて,大損害を与えようとしていること」
  8. H24.03.28 X1X2→Y2 Y1が負うべき未払賃金等の支払請求訴訟等を提起
  9. H24.04.23 Y2解散

 

2 裁判所の判断

 裁判所は,①Y3による本件解散及び解雇行為は,組合活動を行って未払賃金等の債務を免れる目的による違法な行為であること、②Y3は違法にY1を解散しX1X2を解雇する一方,Y1と実質上同一であるY2を存続させてY1社の事業を継続したものとみることができること等から、Y1はY2と別人格であることを主張できず,Y2はY1を承継するというべきとして,Y1Y2に支払いを求める判決をしました。

 

3 ポイント

 Y1とY2は別法人であり,原則としてY1の債務をY2が負うことはありません。しかし,法人格が形骸化したり,濫用されている場合は,例外的に別法人の債務を負う場合があります(法人格否認の法理)。

 本件では,Y1が新会社であるY2を存続させる一方で,不当労働行為や債務免脱目的による違法なY1解散及びXらを解雇していることから,Y1の債務をY2が負うと判示しています。

 

4 転ばぬ先のチエ

 本件で,Y1は,未払賃金だけでなく,付加金の支払いも命じられています。これは,賃金等を労働者に支払わなかった使用者に対し,未払金の他,これと同額の金員の支払を命ずることをいいます。このように違法行為の代償は重いですので,判断に迷う場合には,専門家へご相談ください。

 以  上

 


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