ブリッジルーツの
日本・中国・韓国見聞録

代表弁護士  橋本吉文

執筆協力:中国人弁護士 厳 逸文

ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録代表弁護士 橋本吉文

【第69回】「外商投資産業目録」の改定についての解説


 本年3月10日、3年ぶりに再改定された「外商投資産業指導目録」(以下「指導目録」という)が公布され、4月10日より施行された。周知のとおり、指導目録は、外国投資者が中国への投資に関する重要な規定である。以下、今回の改正のポイントを解説する。

1.「制限類」を大幅に削減 

 外商投資プロジェクトに関して、指導目録では、産業ごとに「奨励類」、「制限類」及び「禁止類」という区分を用いており、この三種類の項目に含まれない業種は「許可類」とされる。

 今回、一番注目される改正点は、「制限類」の産業を2011年度版指導目録の79項目から38項目まで削減したことである。新指導目録において、「制限類」に属していた製造業項目の多くが削除された。例えば、飲料、たばこ、化学製品、医薬品、交通輸送設備の製造業等従来外資参入に対する制限が厳しかった分野が、今回の改正により、「許可類」へ変更され、外国投資者も投資可能となった。なお、製造業のみならず、鉄道貨物輸送会社、出入国自動車輸送会社、直接販売・通信販売・ネット販売、金融会社・信託会社・金融仲介会社、保険仲立会社、高級ホテル・高級オフィスビル・国際コンベンションセンターの建設・運営、不動産仲介会社、輸出入商品の検査・鑑定・認証会社等多種の産業について、外資に対する制限を取り消した。

 しかしながら、製造業やサービス業に対する制限を緩和する一方、高等教育機関、就学前教育機関や医療機関の運営等が新たに「制限類」に追加された。特に、医療機関の運営について、2013年上海自由貿易区の発足により、同区内外商独資の医療機関が認められ、更に、2014年7月、国家衛生計生委員会及び商務部の通知により、外商独資医療機関の新設又は合併に対する認可が上海市、北京市、江蘇省等7つの省・市まで拡大されたにもかかわらず、今回指導目録の改正では、外商独資の医療機関(合弁・合作は可)が制限された。現時点では、上記7つの省・市における外商独資医療機関の運営に関する可否は不明である。その他、中国における自動車産業の成熟化を背景として、自動車完成車の製造も「制限類」に追加された。

 「禁止類」の産業について、中国伝統工芸茶の加工、電気機械及び器材製造業、ゴルフ場の運営等が削除されたため、外資による投資も可能になった。その一方、たばこ製品等の卸売・小売、中国法律事務コンサルティングや文物オークション企業・文物商店等は、新たに禁止項目に追加された。

 また、高齢化や環境問題の悪化等、社会問題の解決策として、高齢者福祉施設の建設・運営、環境保護技術の開発、電力網の建設・運営(中国側の持分支配)、熱エネルギーの生産・供給業等産業が「奨励類」の項目に追加され、石油・天然ガスの開発や鉄鉱石の採掘、高級皮革の加工、大型石炭化学工業プラントの製造等が「奨励類」の項目から削除された。

2.外資比率制限の緩和 

 今回の改正におけるもう一つの重要ポイントは、外資出資に対する比率制限が緩和されたことである。「奨励類」及び「制限類」の産業について、「合弁、合作に限定」や「中国側の持分支配」という制限項目が減少した。例えば、漢方薬材料の栽培・養殖、シェールガス等天然ガス資源の探査・開発、400トン以上のクレーンの製造、民間用航空機搭載設備や遊覧船の設計と製造、海洋工事設備の設計、都市地下鉄・軽量軌道等の軌道交通の建設・運営、上演場所の運営等については、外商独資による参入も可能になった。その他、会計・監査会社について、2011版指導目録においては、合作・パートナーシップに限定されたが、新版において、代表パートナーが中国籍を有する者であればOKとされた。

 また、「制限類」や「禁止類」から外され、「許可類」へ変更された産業については、出資比率制限も撤廃されたため、これらの産業に対しても独資による参入が可能になった。

 

 前述のように、今回の改正は、上海自由貿易区が設立された後に、中国市場の「対外開放」政策を促進するために踏み出した重要な一歩として注目される。新指導目録は、飲料製造業、医療・薬品産業、交通輸送設備製造業、サービス業等様々な産業に対し、大きな影響を与えることが見込まれる。

以 上


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