ブリッジルーツの日本・中国・韓国見聞録

 【第71回】転ばぬ先の労働法


                   弁護士法人Bridge Rootsブリッジルーツ 

             弁護士 秋 山 理 恵

 

―第9回:管理職である副主任の職位にあったXが,妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任から降格させられたことについて,審理不尽であるとして差し戻しとされた事例(最高裁平成26年10月23日判決)―

 

1 事案  ※本テーマに関係するところのみ抜粋しています

  1. H06.03.21 Y,Xを雇用(期間の定めのない契約),Xは理学療法科(リハビリ科)に配属
  2. H15.12.01 X,訪問リハビリ科へ異動
  3. H16.04.16 X,病院リハビリ科へ異動,副主任(管理職)となる
  4. H18.02.12 X,第1子の育児休業等を終えて職場復帰,訪問リハビリ科へ異動,副主任
  5. H19.07.01 Y,訪問リハビリ業務を乙施設へ移管 Xは乙施設の副主任となる
  6. H20.02.  X,第2子妊娠,軽易な業務への転換を請求
  7. H20.03.01 Y,Xにリハビリ課(病院)へ異動,副主任を免ずる(→非管理職)
  8. H20.09.01 X,産前休業(~H20.12.07まで)
  9. H20.12.08 X,育児休業(~H21.10.11まで)
  10. H21.10.12 X,職場復帰,乙施設へ異動(副主任に任ぜられず→非管理職),X抗議

 

2 裁判所の判断

 上記経過の中で,XはYの措置(副主任を免じたこと)が不利益な取扱いに当たり無効であるとして,管理職(副主任)手当の支払い及び損害賠償請求をしたところ,裁判所は,以下のように述べて,原判決を破棄して差し戻しました。

  •  女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は,原則として不利益な取扱いに当たる
  •  ただし,以下のような事情が存在するときは,例外的に不利益な取扱いに当たらない ①当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき,又は②事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって,その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして,上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき
  •  本件は,①自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということはできず,②降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに業務上の必要性から支障があったか否か等は明らかでなく,Yにおける業務上の必要性の内容や程度,Xにおける業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされない限り上記②の特段の事情が判断できないから,破棄して,差し戻す

 

3 ポイント

 会社(事業主)は,妊娠中の女性が軽易業務への転換を請求した場合は,軽易業務に転換させなければなりませんし,女性が軽易業務への転換を請求したことを理由に不利益な取扱いをしてはなりません。不利益な取扱いを認めてしまうと,皆これを恐れて軽易業務への転換を請求できなくなってしまうためです。

 本件は,妊娠中の軽易業務への転換を契機として女性労働者を降格させる会社の措置が不利益な取扱いに当たるか否かについて判断した初めての最高裁判例であり,差戻審の判断が注目されます。

 

4 転ばぬ先のチエ

 女性の社会進出が進み,様々な法律や通達がある中,いざ妊娠中の女性から軽易な業務への転換や休暇の申し出があったりした場合,会社としてはどうしてよいか判断に迷うことも多いかと思います。基本的には,女性であること自体,女性の特徴(妊娠,出産)等を根拠に,不利益な扱いをしていないか,という点が指標になるかと思いますが,判断に迷う場合には,早めに専門家へご相談ください。

 以  上

 


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