ブリッジルーツの
日本・中国・韓国見聞録

上海事務所顧問  古島忠久


【第72回】「工場売却は簡単なのか?」

 日系企業から、ときどき上海にある工場の売却を考えている、との話を聞くことがあります。以前の原稿にも記載しましたが、中国国内での業務縮小、或いは撤退を検討している企業も幾つかあり、今ある工場を如何するか?で悩んでいるようです。そのような検討をされている企業は売却先があるか?の調査をしておられますので、買い手はいますか?と聞くと「なかなか厳しいですね」と言われます。考えてみれば、売り手からすれば、業務縮小、或いは撤退を考えている時に、これから工場を購入し生産を開始、或いは生産の拡大をしようとしている同業者を基本的に探すのは難しいでしょう。また全く違う業種を売却先として探しても、工場のレイアウトや天井高等で使い勝手が悪くなるようで、他業種でも売却先はなかなか難しいようです。

 私も上海市近郊の開発区関係者から、特に汚染物質を出す企業の新規登記は厳しくしている(来なくていい)、と聞いており、また多数の従業員で人海戦術をするような企業の方からは、上海市近郊は既に人件費の高騰により、他の地域(中国以外も含む)で候補先を探す傾向にある、と聞いたことがあります。そのような現状の中、それでも工場の売却先を探して、今の状況を打開したい、との考えを持たれている企業にとっては本当に難しい問題です。

 そうなると、次の手段として中国ローカル企業へ工場の売却先がいないか?を探されているようです。ただ中国ローカル企業への売却となると、皆様も察しのように価格で大幅な値引きを要求されることが多いようです。私も売却先を探している企業の方から次のような話を聞きました。その企業は工場売却を検討するようになって、先ずは工場の今の資産価値を知るために資産評価会社に査定をして貰い、工場のある程度の価値を調査しました。(まあ中国企業の資産評価会社の出す査定が本当に正しいか?とのことは、ここでは考えないでおきます)その査定額を基に話をしたようです。先ずは中国ローカル企業の関係者が数名、工場に来ていろいろ工場内を調査して行き、その数日後にその中国企業の総経理、及びプロジェクト関係者が来社し、この工場は多々問題(個々を具体的に指摘して来た)があるので、もし購入したとしても、その後に修理しないといけないので、そのことを考えるとこれ位の金額が妥当だと考えている、とことでした。その提示された金額は評価会社の評価額の半分程だったそうで、その指摘された問題も多少は認められたとしても、大きく言い過ぎではないか、と感じる内容だったようです。更に個々の査定額を見ていると、土地(使用権)の査定も付近の相場より3割程低かったそうで、その点を相手に聞くと、今上海で工場用地を購入する企業は少ない、だから相場より需要があるか、が重要だ、と足元をみられた、と言っておられました。結局、提示された金額では投資した金額に合わない、とのことで断ったそうです。

 最後に工場売却は、このように難しい交渉(場合よってはブローカーが絡んでくる)になることが予測されますので、最初から専門家とチームを組み、相手と交渉するほうが結果的には良くなるのではないでしょうか。

 以上

 


ページトップへ